年明け早々、よい物語に巡り会った。
山本弘の『翼を持つ少女』である。
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好きな作家の山本弘、ボーイ・ミーツ・ガールな学園ものという青春小説の王道、かつSF好きな主人公と最近よく耳にする『ビブリオバトル』。
なおかつ田原の艦長オススメとなったら読まないワケにはいきますまいっ!と艦長の投稿を見て即ポチッ!(笑)
ストーリーはいたって普通の青春小説であるが、本好き、特にSF好きにはたまらない仕掛けが満載である。
帰国子女、ハーフ、帰化人の子女が通う美心国際学園(BIS)に編入してきた主人公伏木空。
見た目は地味で鈍くさい。だけどかなり気合いの入ったSF好き。故に語り合える友がない。
そんななか、偶然知り合った造り酒屋のもう一人の主人公埋火武人の実家には祖父が残した大量のSF本。
戦前戦後、一時代を築いた70年代と各時代のSF小説の紹介がたまらない。
本好きなら共通の悩みというかむしろ諦めでもあるのが、本に関する情報の共有&交流ではなかろうか。アホほど活字を読みまくる同類というものには特殊な環境にいない限りなかなか巡り会わないものである。
ボクにとっては悲しいかな、中学以来の友だちくらいしか、この手の話が出来る友というのは見当たらない。
そんな本好きならではの境遇を持ち合わせた空に本好きな読者は感情移入させられていく。
そして出会うBISのビブリオバトル部。
こんな部活があったら絶対入っていたであろう、夢のような部である。
自分が好きな本を多くの人にプレゼンして、『読んでみたいと思った本』を投票してキング本を選定するビブリオバトル。
表彰されるのはプレゼンテーター本人ではなく、あくまで『本』である。
同じ本好きがあつまる部活では本に関する様々な情報を共有し合う。
登場人物のそれぞれが得意分野が異なり、SFに限らず紹介されていく情報を書評やカタログ的に読み進めても面白い。
本作は空が自分の居場所を見つけるところで終わるが、この物語はまだまだ続きそうである。
何年も待たずにすむように、せめて年に1〜2冊は刊行していただきたい(笑)