ボクは変態である。活字中毒患者という名の変態である。
カッチュウである以上、本来は『文字を読む』という部分に執着し、快楽を得るということになる。
実際、ボクは本に限らず新聞雑誌、ネットの数多の記事、職場の書類と文字を読むことで心の平穏が保たれる。
そんなカッチュウのボクではあるが、本を読むにあたっては『文字を読む』ということのほかに、もう一つムフフな歓びを得ているのである。
それは『本を愛でる』ということだ。
本のその中身を堪能するだけでなく、本のパッケージとしての完成度を読書の前にひたすら愛でるのである。
今回は、そんなヘンタイの『本を愛でる』ポイントをご紹介なのである。
本を愛でるにあたっては、ハードカバーであるにしくはない。
新書や文庫本では味気ない。
やはり愛でるの値するのはハードカバーである。
具体的な愛で方、愛でる順番を紹介するにあたり、今年初めてポチった『ジョナサン・アイブ』を例に愛撫してみることとする。
まずはなにはともあれ表紙である。
表紙は本の顔である。
顔の善し悪しでこれから読む本の中身への期待が高まるモノである。
左上から右下にかけて表紙から訴えかけてくるモノを貪欲に吸収すべしっ!
読書はすでに始まっているのである。
表紙を堪能したらカバーの背表紙である。
いわば、本の名札である。
背表紙のデザインがしっかりしていないと、本屋で平積みならまだしも書棚に収納されたときに埋もれてしまう。
このミニマムな世界にどれだけ読者の手にとってもらえるかという勝負を仕掛けないとイケないのが出版社の腕の見せ所なのである。
出版社の苦労を逃さず受け止めるベしっ!
背表紙を堪能したら『花布』の鑑賞である。
花布とは聞き慣れない単語だと思うが、紙を綴じて本の表紙背表紙裏表紙との間にある布の部分である。
意外と気にしてない貴兄が多いと思うが、ここはちょっと小粋なデザイン性を発揮できるところである。
本書の場合は全体のデザインのトーンがモノクロでまとめているため、花布の部分もグレー一色で統一感を持たせている。
モノによってはストライプに見えるモノがあったり、暖色系や寒色系の色とりどりのカラーがこの見た目1mmほどのスペースに施されている。
ちょっとしたカラーリングのオアシス。それが花布なのである。
手に取った本の外見チェックの最後が小口のチェックである。
まずはちりの確認。ちりとは本文と表紙の差の部分である。
ハードカバーのつくりは、本体を傷つけないように表紙裏表紙を数ミリ長めに作られている。
この数ミリのバランスが大切なのである。長すぎてもイケないし短すぎてもイケない。
さらに本文裁断の角度をチェックする。
直角で搬送、陳列時の打撃傷なくスクエアのままであることがのぞましい。
シャッキィ〜ンと切れ味鋭く直線になっているときはエクスタシーである。
小口のチェックの後はカバーを外して書籍本体の確認となる。
好みの問題であるが、ボクは背表紙はフラットである方が好みである。
表紙裏表紙と背表紙の間が直角であり、みぞがクッキリ主張している本は美しい。
そして、背表紙はフラット。
すると、表紙・背表紙・裏表紙がそれぞれフラットな面で構成されて、スクエアな美しさを醸し出すのである。
そういう意味では本署の作りはボクは一番好むつくり方である。
改めて、カバーを外した本体そのものの表紙を堪能する。
カバーの表紙と違い、本体の表紙は情報量ではなくいかにシンプルに納めるかが鍵となる。
また、カバーも含めた本全体のデザインコンセプトに合わせた作りとなっているかがポイントだ。
ここで手を抜く出版社は信用できない。
次に本を開き、しおりひもの確認である。
紐の色もデザインの一つである。
文庫だと文庫全体の統一感を持たせて同色というケースが多いが、ハードカバーになると単体のなかでのデザインコンセプトに合わせるべきである。
こういうところでも、気を抜く出版社だとトホホとなる。
たとえば、本書の場合しおりのいろがグレーではなく、注意を引くためにオレンジとかを使っていたりしたらデザインコンセプトが台無しになる。
再度カバーを装着し、おびの確認となる。
この辺りになると『確認』という行為よりも、すでに『読書』のための準備、助走段階である。
この『おび』というもの。そのままにしておくとピラピラとずれたりして読書の邪魔になるんですぐに外して忘れてしまう貴兄が多いと思うが、ここには重要な情報が含まれているのである。
平積みを想定して、読者候補の目に止まるようなキャッチコピーが書かれるのがこのおびである。
したがって、そのキャッチコピーを読めばどんな感じのものなのかが解るのである。
さらにキャッチコピーの下には必ず興味をそそるような前振りの文章や、モノによっては大物作家の紹介文が描かれているのだ。
そういう意味では、これから受け止めるコンテンツの漠然としたイメージを得るために、このおびの文章は重要なのである。
表紙をめくり、カバーの表紙裏の折返しにはたいていその本のあらすじが書かれている。
おびのキャッチで興味を持たせて、この折返しの文章でアウトラインを明確にする。
これから巡る物語の前にその舞台の簡単な紹介みたいなモンである。
カバー裏表紙の折返しにはたいて著者の経歴がのるモンである。
この情報は直接コンテンツの内容に関わるモノでは無いが、どれくらい信用のおける人なのか、ある程度思想的な背景が解る場合が多いので、読書前にしっかりチェックしておくべき部分である。
そして最後に裏表紙。
文庫の場合はこの裏表紙にあらすじが書かれている場合がある。そういう情報は購入前の情報として有益だ。
しかし、本書のようなハードカバーの場合には裏表紙に情報を掲載するケースはみられない。
そのかわり、裏おびに読書候補者に最後の一押しをするようなメッセージが書かれている場合があるので、よくチェックすること!
以上が、読書に入る前にボクが堪能する本の愛で方である。
購入した本を愛でることで体調と頭脳をピークに持って行き、ハァ〜ハァ〜しまくった状態で読書に突入できれば世話はないのである。
たいていが、購入時のハァ〜ハァ〜で絶頂を迎え、そのまま積ん読となり、次の機会を待ち受けるということになる......(^^;)ハハハ。
その点、電子書籍だと読みたいときに買って、愛でることなく読書に入れるというメリットがあるのだが、やはりこの『本を愛でる』という行為ができないので、それはそれで寂しいものだ。
しかし、かつて音楽アルバムをLP版で購入し、アルバムジャケットやライナーノーツを愛でていたモノが、CDアルバムになってそれほど愛でることなく楽しむようになった。いまやDL版だとパッケージそのものもなく音楽そのものを楽しむことで満足はしているのである。
本も音楽と同じ感じになるのだろうか?