御大が紡ぎ続けたこの遠望長大な物語。
御大の死後も二人の紡ぎ手が恐る恐ると書き繋いできたグインサーガも、よぉ〜やくここに来て大きすぎていくら力を入れても廻らなかった物語の歯車が回り始めました。
というのが、率直な感想かも。
今回の135巻は、紅に染められた表紙の通り。
なんといっても侵略するつもりは無いといいながら、他国から見た結果は侵略としか受け取られないことをしでかしたイシュトバーンのパロ篇が一番の展開。
『紅の傭兵』の陽気さはいずこへ、ますます『紅の凶星』いや中原に鳴り響く『凶星』と化していくであろうイシュトバーンの転機となるエピソードです。
それ以外にも、イェライシャに導かれたというか、こちらもなし崩し的に歴史の歯車の一人にさせられた感のあるブランのヤガ・ミロク篇。
また、イシュトになし崩し的に乗っ取られたクリスタルパレスから逃れたヴァレリウスといまさらながら新たな歴史の歯車の一人となりそうな、アッシャによるパロ・ケイロニア国境ワルド篇。
さらには、唯一未来への希望が感じられる、スカールとスーティーによる黄昏の国踏破篇。
と、もう一方のケイロニア篇がまだもたもたともたついている間に、それ以外の中原の運命を担う各地での物語が盛りだくさん。
しかも、どれもこれも歯車がよぉ〜やく回り始めてます。
そういう面では本書は従来のグインマニアの間では物議を醸し出す内容であるかもしれない。
が、ボクはなによりグインサーガという物語の終焉を見たいのである。
もはや御大の時代のようなダラダラとキャララブありきの無駄なエピソードは読みたくも無い。
だから、著者も自信を持ってこの物語を紡ぎ続けて欲しいのだ。
将来、グインサーガ最終巻を読み終えて振り返ったとき、ボクはきっと思い返すのだ。
このグインサーガ135巻『紅の凶星』はグインという物語の起承転結の中で、『転』の最終章の始まりと位置づけられる巻であると。