前作がすべての青き性春時代を送る性少年のオナニー小説だったのに対し、本作では次第に青春小説に向かって行く。
オナニー小説から青春小説に立て直しが図られているのが本作であり、『グミ・チョコレート・パイン』を立派な青春成長小説として成立させるために必要な道具立てのすべてが本書には詰め込まれていく。
三部作の第二作というものは、スターウォーズでいえば『帝国の逆襲』。
作者もあとがきで述べているように、この第二作というモノは起承転結でいうと非常に難しい。
『承』で終わってはモノ足りず、次の『転』まで読者を引き留めていけない。『転』まで描ききってしまうと、第三作目でのスペクタクルが無くなってしまう。
本書では『転』の冒頭くらいで終えている。なので捕まえられた気持ちの持って行きようが無く、次はまだまだ?と次作への期待が引き摺られるのだ。
帝国の逆襲はダースベイダーにルークは自分の息子だと言われ、動揺を隠せずに逃げたところで終わり、本作はなんとっ!?
左手にブルマーを握りしめたまま、右手でベルトを手際よく外した。一瞬、誰かに見られている気がして振り向いたが、もちろん誰もいない。ホッと息をつき、そして賢三はまた、ポコチンを握りしめた……。
主人公の賢三がついにオナニーネタとして禁じていたヒロイン山口美可子をズリネタに、やるんか?やってしまうんかっ??やりよるんかっ???
という場面で非情にも終わるのである。
.........ラストシーンをおいてなおやはりオナニー小説から脱していない。
が、そんなことは無いのである。
ここに至る道中、「不条理なほどほとばしってしまう抑えようのない激情」を抱くボンクラ共はもはや背中すら見えないほど先を進んでしまった山口美可子を追いかけるべく、さらなる懊悩に無駄な日々を費やし、ついに自己表現の一つの形であるバンド活動という形を見出すのである。
はたして、美可子に追いつくことはできるのか?
美可子はさっさと大人の階段を三段飛ばしで駆け上がっているぞっ!どうするどうなるボンクラ共っ???
ということで第三作パイン編に続くのである。
角川書店
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