池袋は「点」の街である。
とはかの名コラムニスト泉麻人の名言であるが、確かに池袋という街は池袋駅(西武百貨店、東武百貨店、ルミネ)とサンシャインの2拠点で事足りてしまうといえば、足りてしまう街なのである。
しかし、駅を一歩踏み出して戦後闇市の区画が残る一角にまで足を伸ばすとそこはディープ池袋。
なかなか新宿や渋谷といった都市化された副都心とは異なる光景に次第に心奪われていくのである......。
特に怪しいディープさを発揮しているのが池袋駅北口から北に伸びる池袋1丁目と池袋西口から要町方面へまっすぐ伸びる要町通りと劇場通りの間の区画、池袋2丁目あたりであろう。
北口には東京中華街ともいえるリトルチャイナが年々拡大をしているし、劇場通りの一つ裏手の路地には一部には有名なさくらカフェがなんとも異国情緒豊かな街の光景を作り出している。
だがこのディープ池袋、ただ単に異国所緒豊かなだけがディープな所以ではけしてない。パッと見、いったい誰を相手に商売しているのかわからないような昔ながらのお店が路地のそこかしこに点在するのである。
今回はそんなお店の中でも、まだ一部には有名らしいお店をご紹介なのである。
そのお店は池袋北口から平和通り商店街をまっすぐ進み、『池袋の森』に入る路地の手前に存在する。
そう、池袋にはなぜか森が存在するのである(笑)
お店の外観からしてなかなか入るのを躊躇わせるのに余念がない。
営業しているのか、朽ち果てようとしているのかわからない。
目にすることができる看板には一言『食堂』と書いてあるのみ......。
これでは食べログで調べようもないのである。
ちなみにこの写真に写っている白い暖簾は、暖簾が出ているからといって営業しているとは限らない。
これ以外にちゃんと暖簾が存在するのである。もちろん、閉店時でも常にこの白い暖簾はかかっているのだ(笑)
そぉ〜いえば食べログには定休日:月、火、水と書いてあるが、必ずしもそうとは限らない。
月曜日でもやってる時はやっている。やっていたらラッキー!くらいに思っていた方がよい。よぉ〜は不定休みたいなもんである...(^^;)ハハハ。
こんな怪しい外観ではあるが、いろいろとこのお店の特徴が店外からも伺える。
まず、このお店は黒豚の角煮が名物なようだ。
なぜか、ポスター作りに力を入れていることが伺える。
そして、なんの4種の神器か解らぬが、4種の神器を押してくる。
当然、黒豚の角煮に本まぐろ中おち刺、なんとも美味しい鹿児島のねぎ、そして......たくあん!?!?
いやいやいや、黒豚の角煮と本まぐろの中落ちは、まぁ~これも肉・魚揃い踏みでおやおや?と取るか、豪勢!ととるか人それぞれだろうが、ねぎにたくあんて4種の神器として括るにはレベル間が合ってなくはないでしょうか?とツッ込みたくなる衝動に駆られるのである。
お店に入る前からすでに、モヤモヤ感が募るばかり......。
また、純粋黒豚の脂の解説や、鹿児島のねぎのアピールが盛り込まれた定食の看板も。お肉もお魚もなかなかボリューミーな定食である。これは食事は期待できるかも??
そんなお店のご紹介ポスターを眺めながらふと右側を向くと......。
なんと店先の隅っこに自転車で隠されてとても周囲にアピールする気がまったく感じられないこのお店の名前入り看板を発見っ!?
どぉ~やらこのお店の名は『九州一食堂』というらしい。
後で調べたところによると、もともとは『東京一食堂』としていた店名をお店の人の気まぐれで『九州一食堂』に変えてしまったのだとか...(^ ^;)ハハハ。
なるほど、あまり店名にこだわっていないから邪魔にならないように隅っこのほうに看板は押しやられているのか......ってか、お店の看板てそんな扱いでいぃ~のかっ!?!?
おそらく、デートでは絶対に使わないであろう雰囲気が満ち溢れている九州一食堂だが、食事はすごいかもしれない!との期待感とともに、店内に突入。
外観も外観だが、店内も店内。
入り口を入ると昭和の食堂というか、ジャッキー・チェンの映画に出てくる大衆食堂というか、いやいやそのどれとも違う独特の雰囲気をかもし出す、やはりディープな空気感の店内......。
不思議な作りはその座席の配置である。
まず、入って右側がテーブル席。緊張して冷静にカウントできなかったが、4人掛けテーブルが4卓くらいだったか?
そして意味が解らないのがカウンター席である。普通カウンター席は隅のほうを有効活用するために設置するもんだと思うが、ここではお店のど真ん中に配置されているのである。しかも片側だけ...。
そして入り口左側は一段高くなっており、おそらく昔は小上がりの座敷席だったのでは?と思われるところにテーブル席!?
一段高いところにテーブル席である。もはやこの自由すぎる発想についていけない(爆)
とりあえずこの日は一人だったんで、テーブル席は躊躇われ、カウンター席に着席。
着席するや否や、お水を運んでくるこのお店の女将さん。
女将『なににします??』
しかし、すでにこの時点でこのお店が醸し出すあまりにも自由でエキセントリックな雰囲気に飲まれてしまっているのである。
しかも、メニューなんてものはない。この手のお店にはありがちだが、すべて壁に張られている短冊から選択をしなければならないのである。
困った。
がっ!?初見のお店では名物を食うべし!である。
確か外の看板に名物の黒豚角煮と本まぐろの中おちの定食があったはず。
ということで、まずは『黒豚角煮と刺身定食』をご注文。
定食を頼んで一息ついた後、冷静さを取り戻したボクは身を乗り出して、テーブル席まで壁の短冊メニューをチェックしにいこうとすると...。
この女将さんもなかなかモヤモヤさせるキャラクターである。カウンターの一番端でノートパソコンでPCゲームに興じていたらしい(笑)
どれもこれも一度は味見したいメニューばかり。古き良き大衆食堂のメニューである。
その中からあじフライを1尾追加で注文した。
待つこと数分。
女将『はいぃぃ~~~必殺定食お待ちっ!!!』
と、やはりエキセントリックだった女将がお盆をボクの目の前に置く。
♂『..................。』
言葉が出ない。『ムムムっ!?必殺??』と心の中で思ったが、やはり必殺である。秒殺なのである。
まず、その量が必殺である。またところどころツッ込みたくなる箇所が必殺である......。
まず、想像以上だったのがこの名物黒豚の角煮だ。
黒々と味が中まで染み渡っているであろう、照り照りな豚肉の塊が暴力的なまでに積みあがっている。
角煮は好きだが、3かけらくらいいただければ十分なのである。それが、この量とは...(^ ^;)ハハハ。この量を平らげるにはおそらくこれだけでどんぶり飯大盛りくらいいただかないとバランスが取れない。
しかし、その暴力的なまでの圧殺ぶりに半分心が折れながらも、一口齧ると黒々とした見た目に相反して、繊細な味付け。色は濃くともさほど辛く感じないのである。
もちろんどこを食べてもトロトロであることはいうまでもない。
ほのかに甘みを感じる非常に旨い角煮であることは間違いない!
しかし、量が多すぎる...(^ ^;)ハハハ。
そしてもう一方の雄、『本まぐろの中おち』だ。
これも暴力的なまでの量。これまでこれほどの中おちを一度に目にしたことも食したこともない。
刺身というよりもまぐろの肉を削りだしたモノである(笑)
中おちなんで、肉の大小は否めないが大きいものはケンタッキーのポテトかっ!?といわんばかりの8cmほどの塊が出てきた(笑)
本まぐろ自体は生本まぐろを歌っているだけあって、非常に旨い。もぉ~笑うしかない。
ご飯はなぜか雑穀米。雑穀米は嫌いではないが、できれば白米でいただきたい。
ちなみに、ご飯の量も大目である...(^ ^;)ハハハ。
汁物はかに汁。普通の味噌汁かと思いきやかに汁である。しっかりかに出汁が染み出しており文句の付け所がない。
しかしなにゆえかに汁??
逆にいうとこのお店ではかにが喰えるということであるなぁ~と。
そして、4種の神器の一翼を担うたくあんである。
これもアピールするくらいだからすごいのかと思いきや2切れ!?ヲイヲイっ!
ムムムッ!?なのである(笑)
さらにはたくあんの小皿の下には納豆。
納豆っ!?!?納豆好きだからあるに越したことはないが、この定食のラインナップで納豆をつける意味があるのだろうか?
ムムムッ!?!?もぉ~意味が解らない(笑)
さらに追い討ちをかけるのがこのわらび餅。
もぉ~ここまでくると意味を考えてはいけないのだ。
これは九州一食堂さんのサービスなのだと快く受け止めるしかない。
もぉ~このお盆の上の小宇宙だけでボクのお腹はキャパシティーオーバーであることは間違いない。
追加でオーダーしたあじフライは勇み足だったと気づいた頃にはもぉ~遅い......。
女将『そんなに食べられないんぢゃないのぉぉぉ~~』
とほくそ笑みながら女将があじフライを運んできた。
やはりデカめというか肉厚。これはこれで旨いのである。このお店、やはり侮れじで料理にはずれなしっ!
そして、ソースはやっぱりイカリソースよねぇ~ってか、九州料理ならチョーコーソースとかデコーソースじゃないんかいっ!!
とムムムッ!?!?!?なのだ(笑)
そんなこんなな『九州一食堂』。まさにディープ池袋な一軒!
ここでしか味わえない雰囲気と、この暴力的なまでの見た目に拘らない一級品の数々。
勇気を出してこの暖簾を括ってみませんか?(笑)