『クラシック(Classic)』の意味を辞書(Weblio英和辞典)で引くと、
- 〈芸術品など〉一流の,最高水準の; 典雅な,高尚な
- ・古典の,ギリシャ・ローマ文芸の
- ・古代ギリシャ・ラテンの芸術様式にならった; (ロマン主義に対して 18 世紀の)古典風な,古典的な
- ・(文化的・歴史的に)由緒のある
- ・伝統的に有名な,古典的な
- ・〈服装など〉流行にとらわれない,(はやりすたりがなく)伝統的な(スタイルの)
- 〈学問研究・研究書など〉権威のある,定評のある
- 典型的な,模範的な
ということだそうだ。
ここ数年、最近のデジタルカメラでは飽き足らず、Leica、Nikon、Canon等々のクラシックカメラと呼ばれるフィルムカメラに御執心なのだが、そんなクラシックカメラと一括りにされる中でもこの『Classic』の意味合いが心・技・体兼ね揃うカメラをボクはこれまで敢えて避けてきたのである。
流石にフィルムカメラといっても35mmフィルムカメラで留めておくべきであろうと。
せっかくレンズマウントもLeicaマウントを中心に整理したワケだし、なにより6月以降フィルム価格は今後青天井になるのではないかっ!?というほどの価格高騰を招いている状況である。
これ以上、フィルムコストが増すような環境は避けるべきであろうと。
.......これではナニを言わんとしているのかさっぱり解らないと思うので、単刀直入に言うと、『フィルムカメラは35mmフィルムカメラに限る。120フィルムを使用するような中判カメラには手を出さない!』とこれまで我が欲望の足かせとしてきたのだ。
そんな努力も蟻の一穴で崩壊してしまうということは、古の時より言い伝えられ続けてきたことである。
まさにそんな蟻の一穴はフトした気の緩みなのである。
先日エントリーをアップした『大人の科学 35mm二眼レフカメラ』が今回の顛末の全ての元凶なのだ。
本買う感覚で安いからとりあえずポチってみるか!
前から欲しかったけど、今回復刻版が出るっていうからこのチャンスを逃さないほうがいいよね!!
まぁ、どうせトイカメラ程度のおもちゃ二眼レフだからお試し程度ですぐ厭きるよね!!!
今となってはなんと浅はかであったことだろうか。
最低限のインプットを元にさらなる知識・体験を掘り起こしていきたいという人間の飽くなき探究心、業の深さが解らぬ愚か者の所行である。
斯くしてボクは大人の科学の付録であるGAKKENFLEXを手にして、初めて二眼レフカメラの所作を体験するワケであるが、ウェストレベルファインダーをうつむいて覗き込むという従来の35mmフィルムカメラとは異なるお作法に違和感よりも高揚感に包まれたのである。
さらには箱の中身を覗き込んだところに写るモノは左右逆像。目の前の世界を切り取るというカメラの感覚とはコトなり、箱の中には目の前の映像と異なる画が展開されるのである。
ここまで来ると、生来好奇心の塊であるボクの知的探究心の高揚はとどまる術が無い。
GAKKENFLEXで撮れる写真は所詮チェキ程度のモノでしかないが、光の加減によってはハーフサイズカメラか?というほどのモノも撮れる。
しかし、どうせならちゃんと120フィルムを使用した中判カメラそれも二眼レフカメラで撮ってみたくなるというのは疲れたら眠くなるのと同様に当然の摂理である。
目の前に一台のカメラがる。
これこそなにを隠そう、いや全然隠していない。
『クラシック(Classic)』に定義されるギリシャ・ローマ以外の意味合いをほぼ網羅するカメラ、二眼レフカメラの雄『Rolleiflex 2.8F』である。
ここ数年、これには手を出すまいと硬く心に誓ったカメラなのである。
しかし、目の前に降臨召されてしまったからには仕方がない。
純朴なる物神の僕としてお使いするしかないのが厄介なこのウィルス感染者の業である。
歴史の長いRolleiflexの中でも50年代末から80年にかけて長いこと製造されてきたRolleiflex 2.8FとRolleiflex 3.5Fは特に今でも人気が高いという。
大きな違いは撮影レンズが2.8Fは80mm F2.8、3.5Fは75mm f3.5というところ。
中判レンズは全く知識がないンで、35mmに換算しないことには画角のイメージが沸きづらい。
ちなみに80mmは35mm換算では44mm相当。75mmは41mm相当というコトらしい。この3mmの画角の違いがどれほどの違いとなるのか解らないが、とにかく自分が彷徨くところを前提に考えると、路地裏を彷徨くコトが多いことから、一段でも明るい方がいいのでは?というテキトーな理由からRolleiflex 2.8Fを選んだのである。
さらにこのRolleiflex 2.8Fをややこしくしているのがレンズの違い。
同じ80mm f2.8のレンズとはいえ、ツァイスのプラナーとシュナイダーのクセノターの2種類存在するという。
レンズの違いもプロレベルではハッキリと感じるのだろうが、ただのミーハーなのでプラナーを選ぶことにした...(^^;)ハハハ。
斯くしてこのRolleiflex 2.8Fである。
二つの眼を抱えた金属の塊。
横ではなく縦に構える直方体の箱。
サイバーパンクなダイアルの数々。
しかして、雑多な印象は全くなく、収まるところに収まり、それぞれが必要な機能として全体の一部を成している合理性。
にも関わらず、道具以上の存在感を醸し出す幽玄美。
これこそクラシカルなカメラの一つの究極の姿である!
と、この物神を僕は敬愛の眼差しで二つ眼を覗き込むのである。
そうなのだ、ボクはやはり病気なのである。
構えて左側にはピント合わせのノブとそこに出っ張る露出計。
その斜め右下にはフィルム感度設定ダイヤル。
その他の二つの小さなノブはフィルムスプロール脱着のノブである。
背面にはEV値換算表が貼られている。
外部露出計でEV値を測り、換算表から絞りとSSを設定するという使い方も可能だ。
構えて右側にはフィルム送りのクランク、右上にある数字の窓がフィルムカウンター。
その下は12枚撮り、24枚撮りのフィルムタイプ設定レバー。
正面から見た神々しいお姿。
上のレンズはビューレンズ。ここから入り込んだ光がミラーに反射されてウェストレベルファインダーに写し出されることになる。
その左にある小さなレバーはセルフタイマー。
下のレンズが撮影レンズ。ZeissのPlanar 80mm f2.8である。
上下レンズの両脇の小さなダイヤルの左側がシャッタースピード、右側が絞りを設定するダイヤルである。
上部のロゴの下にセレン受光部があり、露出計が反応する。
セレン式露出計というとちょっと動き出すのがゆっくりというイメージがあるが、この個体のセレンはとてもキビキビ良く反応する。
正面左下の目立たないポッチがシャッターボタン。右下はコネクトロックとシンクロ接点。
底面は三脚ネジと裏蓋開閉用のロックがある。
上面はこんな感じ。まだファインダーを開いていない状態である。
下を覗き込んで使用するコトを前提にデザインされていることから、レンズの根元の部分に絞りとSSの窓がついている。
ウェストレベルファインダーを開けるとそこは不思議な世界が広がる。
35mmフィルムカメラといっても、レンジファインダーやプリズムのついた一眼レフしか使ってこなかったモノに撮っては左右逆像というのは異世界である。
チョートク翁は数々の書籍の中でカメラを通して世界を見ることを視神経の延長という表現をすることがあるが、これまで35mmフィルムカメラで経験してきたことは、まさに眼で見る世界とカメラを通して増幅・拡大されて見る世界は繋がっており、視神経の延長という表現が最もなのであるが、このファインダーの中に存在する景色は現実から切り離された一枚の『画』のような感じに受け取られるのである。
これが、二眼レフにハマった一番の理由でもある。
ちなみにファインダーのピントが掴みづらい時にはこのようにルーペを繰り出して拡大して確認することも可能だ。
ルーペを通してファインダーを覗くと、当然のことながら拡大されるワケなんで、むやみやたらと覗くと一体どこにピントを合わせようとしているのか逆に解りづらくなる(笑)
裏蓋を開くには、まずは底面のロックを外す。
さらにもう一つのレバーを使用してロックを外すという二重機構。
この用意周到さは独逸っぽい生真面目さを感じるところでもある(笑)
背面カバーを開くとレンズに繋がる暗室部。
120フィルムは底面側にスプロールをセットすることになる。
フィルムを一本使い切ると、このようにスプロールが残った状態になるため、これを外して、
上部の開いている方にスプロールをセットする。
ピントが無限遠の状態はこの状態。
最短撮影距離は1mほどの様だが、最大ここまで二つのレンズ部が平行に伸びていく。
このボディとの平衡を保つ仕組みが精巧なのだそうだ。
とりあえず、シャッターも切れているようだし、露出計も外部露出計の結果を変わりがないの順調のようである。
次はフィルムを装填して、試し撮りをはやいところせねばなるまい。