ボクは進化しすぎた人間である。
なので、太古の古の記憶も持ち合わせていないし、霊験新たかでもない。
ましてや、UFOと交信出来るはずもなく、小さいおじさんですら見かけたことはない。
超常現象はムーを通じて知り得たことばかり、ボクは悲しきムー少年なのである......。
そんな凡人が育てているうちの小春さん。
最近、これはどうもおかしいと感じるようになってきた。
この部屋に引っ越してきて以来、度々人の気配を察しているのか、玄関の方を伺うようなそぶりをたびたび見せていた。
最初のうちは風の音か廊下を通り過ぎる人の気配に反応しているんだろうくらいに軽く考えていたのだ。
なにせボクは悲しきムー少年だから(笑)
そんなことが度々続き、ある日いつものようにうちの小春さんがまた玄関の方を伺っている時に、フト違いに気が付いた。
気付いたのはボクではなく、うちの相方さんではあるが...(^^;)ハハハ。
うちの相方さん曰く、小春が様子を伺う際には二つのパターンがあるというのだ。
人の気配を察して興味を持って伺っている時は尻尾が出ていて、嬉しいときと同様に左右に小刻みに尻尾を振っているのだという。
雷をはじめ小春が緊張しているときは尻尾を丸めてお腹につけているため、座っているときに尻尾が見えないのだという。
この時はいつものように玄関の方をジッと見つめており(もちろん尻尾は丸まっている状態だ)、やがてなにかを追うようにリビングのとなりの和室の方に身体を向けて様子を伺いだしたのである.......。
♂『どうした?どうした??なにもいないじゃん。こっちおいでっ!』
ボクは和室に入り、小春を誘おうとしたのだが、小春は和室を凝視したままガンとして動かない......。
ヲイヲイ。これはどうしたことか?ボクには見えない何かが玄関から和室に移動したのだろうか??
ここに越してきて半年間、会社の業績が振るわないこと以外は特に体調がおかしくなったこともなければ、不運に見舞われたこともない。特になにかに呪われてる気配は感じないのであるが......なにかが...いるのだろうか...(^^;)ハハハ。
そんな見えないモノの脅威があるかと思えば、リアルな怖さも先日経験したのである。
♀『ねね、ちょっと起きてっ!起きてっ!!』
夜中の3時くらいに突然うちの相方さんに揺さぶり起こされた。
♂『なに......なに...。』
♀『いいからちょっと。ちょっと来て来てっ!』
寝ぼけた相手に抽象的なことをいってもなにも理解できないので、寝ぼけた相手には具体的に状況と要望を伝えるべきだとこのときはっきりとボクは実感した。
とにかくうちの相方さんがなにをいっているのかさっぱり解らなかったのである。
♀『鍵開けようとしている人がいるのっ!?』
これを聞いて、ようやくボクの灰色の脳細胞は覚醒したのだ。
すわっ!?泥棒か??
武器を探しにバタバタし始めるボクを制して、
♀『しっ!ちょっと覗いてみてっ!』
と覗き穴にボクを誘ううちの相方さん。
どれどれと覗いてみると、確かに誰かいる。50代くらいのおばさんっぽい人である。
×『ムフフフ。ハハハ。あれぇ〜。』
となんか酔っ払っているのかラリっている感ありありで、ガサガサと鍵を開けようとしている。
鍵が開かないので、別の鍵でも探しているのか、うちの限界の前にしゃがみ込んで鞄をぶちまけてなにか探している模様.......。
これは酔っ払ってフロアを間違えているのではないかと推測した。
相変わらずガチャガチャやっているんで、
♂『どちらさんですかっ!!なにやってんですかっ!!』
とまずはドア越しに声をかけるボク。
×『誰って、お母さんだがね。ムフフ、アハハ。』
いやいやうちのご母堂様なら群馬だし。そもそもうちの鍵なんか渡してないし...(^^;)ハハハ。
ボクとしては酔っ払いの判断を下していたのだが、うちの相方さん的には基地外の可能性もあるからドアを開けるなと。ホント用心深いたいした嫁さんです。
ついにたまりかねたうちの相方さんが通りの良い大きな声で、
♀『なにしてるんですかっ!警察呼びますよっ!!』
と叫んだら、『警察』の言葉で目が覚めたのか、急に意識が繋がったのか、そのおばさん
×『あ゛っ!?すいませんでした。』
と普通の感じで謝り、そそくさとエレベータに去って行ったのでした...(^^;)ハハハ。
今回は酔っ払いだったと思うんで良かったにしろ、前に住んでいた人のストーカーだとか基地外相手だとなにが起きるか解らない。
ムー少年では関知し得ない見えない霊現象よりも、人間相手の方がよほど怖いと思った真夜中の出来事だったのでした...(^^;)ハハハ。